2015年 工房通信


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- 2015年1月 -

春という待ち人

 寒中お見舞い申し上げます。そして相変わらず筆の遅い私のコラムにお付き合い下さいましてありがとうございます。

 2015年、新しい年が明けたという感慨に浸る間も無く、その冒頭から世界中で暴力の連鎖が続いています。心の痛むニュースばかりで、あまりに軽く扱われる人の生命の軽さに憂いを隠せない日々を過ごしています。世紀末だというのは簡単な事ですけれど、それだけでは済まされない日常と、この無常を私たちはどう受け止めれば良いのでしょうか。本来、人を救うための思想が道具になり下がっている現実を私たちはもっと重く考えるべきかも知れません。

 さて、我が事に目を転じれば、1月初めの大雪で休み明け早々から雪に埋もれた工房周りを、我々の通路を確保するために連日雪かきやら屋根の雪降ろしやらに追われ、公私共に疲労困憊の新年事始めでした。以前、このページで里山の風景と雪の白さを称えておきながら、人類と自然が運命共同体であるためにはそれなりの覚悟がいるのだという事も身をもって痛感しています。一度この地を訪れた方ならお判りになると思いますが、工房の所在地は宮城というよりは山形内陸に近いので、県内でも有数の豪雪地帯です。長年この工房へ通う私やスタッフにとってやはり春の訪れは、その喜びも一入(ひとしお)大寒を過ぎたいま心から春が待ち遠しい今日この頃です。そういう訳で、皆さんにも一つこの春にかかわる朗報があります。詳細は関連ページをご覧いただくとして、例年3月に開催している「はた織伝習館染織教室」の修了記念茶会が今回からその内容をリニューアルすることになり、プログラムの中に小さなコンサートが加わりました。「なずな茶会となのはなコンサート」と銘打った催しの第1回目のゲストには、詩人の谷川俊太郎さん、ピアニストの谷川賢作さんのお二人をお迎えし、皆さんに里山の「はる」のひとときを五感で楽しんでいただくという趣向です。当日の司会進行は某国民的放送局で長年自然番組制作を手掛けてきた私の古い友人・小野泰洋さんが友情出演でお手伝いして下さいます。久しぶりに賢作さん、小野さん、私の3人(通称:笠原組)が集まって企画した催しですけれど、どうなりますことやら……興味のある方はぜひこちらの詳細ページを覗いてみて下さい。100席限定(全席自由)の先着順ですので、お申し込みはお早めに!!

 タイムリーな事に、今月発売された「婦人画報・2月号」(ハースト婦人画報社刊)の「きものの力」という新連載の第2回に私の作品が掲載され、私のきもの作品と谷川俊太郎さんの詩で構成された誌面では、女優の市川実日子さんが着用して下さっています。参考までに、このページをご覧いただくと偶然にも前述した3月の催しのキーワードが隠されていますので、ぜひぜひこちらもご購読下さい。大変ありがたいことに昨年末から幾度か、私のきもの作品を雑誌に取り上げていただく機会があり、同じく「婦人画報・1月号」(前回)では連載中の「真野響子が巡るきもの遺産」(第37回 愛し、日本の色)のページで、紫を担当することになり、コチニールで染めた私のきもの作品を彼女が着用して下さっています。そして、来月2月に発売される季刊「美しいキモノ・春号」(ハースト婦人画報社刊)では桜の特集企画に私の作品が登場する予定です。

 まだまだ雪の多いこの季節、外出もままならない日々ですが、せめてこれらの誌面で皆さんとコンタクトが出来ることの幸せを感じています。

 今回は、染織家らしいいつものつれづれを書き添えられず申し訳ありませんでした。来月また必ずこのページでお会いします。

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天然の染料を主体に、染めと織りの手仕事で、趣味の着物や帯、服地から小物まで、制作いたします。